ロッジ
2003年1月20日昨年の冬、初めて息子をスキーに連れて行った。
宿泊したのは、ロッジと名のつく、いわゆるスキー宿だった。
息子は7歳のその年まで、旅行といえば親の嗜好に従い大型ホテルにしか泊まったことがなかった。
いわゆる純和風旅館やペンション、民宿、ロッジというような所を彼は知らなかったのである。
出かける前に予備知識をと思い、ある日私は息子に言った。
「今度スキーでお泊りする所にはね、エレベーターがないんだよ」
すると息子は、きょとんとした顔で、
「じゃ、エスカレーターだけなの?」と訊く。
エレベーターのない宿泊施設にエスカレーターなんかあるかいっ! とツッコミたい気持ちを堪えて、エスカレーターもないの、と私は続けた。
しかし、「じゃ、階段だけなの? 」と言う息子の遠い視線の先には、20階建てのホテルの階段を自分の部屋に向かってひたすら昇る息子の姿が浮かんでいる。
私はあわてて、今度お泊りする所は2階建てなの、と説明した。
すると今度は、「2階建てなの? じゃ、横にうーんと広いんだね」とくる。
どうも、かみ合わない。
まぁ、行ってみればわかるだろう。
百聞は一見にしかず、である。
息子は、スキー宿での2泊を大いに楽しんだ。
宿泊客全員が日に何度も上り下りする階段。
壁に貼られた手書きのお知らせ。
宿の人を呼んで買う、自動じゃない自動販売機。
100円玉を入れないと映らないテレビ。
すべてが彼にとっては新鮮であったに違いない。
用もないのに階段の上に何十分も座り込んで通り過ぎる客たちの顔を眺めたり、何度も玄関を出て雪に触ってみたりした彼は、2泊して東京に帰る頃にはすっかり「ロッジ」のファンになっていた。
今年も息子を連れてスキーに出かける。
今回もまた、宿泊はスキー宿である。
「今度のお宿もエレベーターがないよ」
先日、息子に言ってみた。
すると、すでにロッジの権威である彼はにっこり笑ってこう言った。
「ママ、当たり前でしょう。スキーでお泊りする所にエレベーターなんかないよ。ロッジなんだから」
アルファリゾート・トマムや、リステル猪苗代のような大規模ホテルに泊まって滑るスキーもあるということに彼が気づくのは、何年先のことだろうか。
結局、自分の経験の中でしか物事を考えることができない子どもが、改めて可笑しく、可愛い。
宿泊したのは、ロッジと名のつく、いわゆるスキー宿だった。
息子は7歳のその年まで、旅行といえば親の嗜好に従い大型ホテルにしか泊まったことがなかった。
いわゆる純和風旅館やペンション、民宿、ロッジというような所を彼は知らなかったのである。
出かける前に予備知識をと思い、ある日私は息子に言った。
「今度スキーでお泊りする所にはね、エレベーターがないんだよ」
すると息子は、きょとんとした顔で、
「じゃ、エスカレーターだけなの?」と訊く。
エレベーターのない宿泊施設にエスカレーターなんかあるかいっ! とツッコミたい気持ちを堪えて、エスカレーターもないの、と私は続けた。
しかし、「じゃ、階段だけなの? 」と言う息子の遠い視線の先には、20階建てのホテルの階段を自分の部屋に向かってひたすら昇る息子の姿が浮かんでいる。
私はあわてて、今度お泊りする所は2階建てなの、と説明した。
すると今度は、「2階建てなの? じゃ、横にうーんと広いんだね」とくる。
どうも、かみ合わない。
まぁ、行ってみればわかるだろう。
百聞は一見にしかず、である。
息子は、スキー宿での2泊を大いに楽しんだ。
宿泊客全員が日に何度も上り下りする階段。
壁に貼られた手書きのお知らせ。
宿の人を呼んで買う、自動じゃない自動販売機。
100円玉を入れないと映らないテレビ。
すべてが彼にとっては新鮮であったに違いない。
用もないのに階段の上に何十分も座り込んで通り過ぎる客たちの顔を眺めたり、何度も玄関を出て雪に触ってみたりした彼は、2泊して東京に帰る頃にはすっかり「ロッジ」のファンになっていた。
今年も息子を連れてスキーに出かける。
今回もまた、宿泊はスキー宿である。
「今度のお宿もエレベーターがないよ」
先日、息子に言ってみた。
すると、すでにロッジの権威である彼はにっこり笑ってこう言った。
「ママ、当たり前でしょう。スキーでお泊りする所にエレベーターなんかないよ。ロッジなんだから」
アルファリゾート・トマムや、リステル猪苗代のような大規模ホテルに泊まって滑るスキーもあるということに彼が気づくのは、何年先のことだろうか。
結局、自分の経験の中でしか物事を考えることができない子どもが、改めて可笑しく、可愛い。
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