母親
2003年8月14日数日前のこと。
仕事の帰り道に自転車で走っている時、数十メートル前で女性が自転車で横転しているのを目撃した。
女性は背中に小さな子どもをおんぶしており、必死で立ち上がろうとしているのだがバランスが取れずなかなか立ち上がることができないらしい。
その母親を「ママー!ママー!」と叫びながら、小学生低学年くらいの女の子が二人がかりで一生懸命に助け起こそうとしている。
道幅の狭い車道の端っこ。今にも車にひっかけられそうで危ない。
私の少し前を自転車で走っていた見ず知らずの女性が自転車を乗り捨てて助けに走った。彼女に続いて私も駆けつけた。
助け起こされた女性は、屈託のない笑顔で何度もお礼の言葉を口にした。
見ると、背中の男の子がぎゅっと左耳を押さえて泣いている。
坊やが怪我をしたのでは?と訊ねると、母親はこともなげにこう言った。
「この子は目が見えない子なので、耳を押さえるのが癖なんです」
ハッとして反射的に背中の子を見た。
男の子は、一度も目を開けない。
目が見えない子。
風邪をひいている、とでも言うかのように軽い調子で母親が言ったその言葉は、とてつもない重みを携えていた。
かける言葉が見つけられないまま戸惑っている私たちに、小学生のお姉ちゃん二人が小さな頭をぺこぺこと下げ、
「助けてくれてありがとうございました」と言った。
がんばれ、ママ。
あと、子どもをおんぶして自転車に乗る時は、ヒールの高いサンダルはやめようね。
仕事の帰り道に自転車で走っている時、数十メートル前で女性が自転車で横転しているのを目撃した。
女性は背中に小さな子どもをおんぶしており、必死で立ち上がろうとしているのだがバランスが取れずなかなか立ち上がることができないらしい。
その母親を「ママー!ママー!」と叫びながら、小学生低学年くらいの女の子が二人がかりで一生懸命に助け起こそうとしている。
道幅の狭い車道の端っこ。今にも車にひっかけられそうで危ない。
私の少し前を自転車で走っていた見ず知らずの女性が自転車を乗り捨てて助けに走った。彼女に続いて私も駆けつけた。
助け起こされた女性は、屈託のない笑顔で何度もお礼の言葉を口にした。
見ると、背中の男の子がぎゅっと左耳を押さえて泣いている。
坊やが怪我をしたのでは?と訊ねると、母親はこともなげにこう言った。
「この子は目が見えない子なので、耳を押さえるのが癖なんです」
ハッとして反射的に背中の子を見た。
男の子は、一度も目を開けない。
目が見えない子。
風邪をひいている、とでも言うかのように軽い調子で母親が言ったその言葉は、とてつもない重みを携えていた。
かける言葉が見つけられないまま戸惑っている私たちに、小学生のお姉ちゃん二人が小さな頭をぺこぺこと下げ、
「助けてくれてありがとうございました」と言った。
がんばれ、ママ。
あと、子どもをおんぶして自転車に乗る時は、ヒールの高いサンダルはやめようね。
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