FMV
2003年2月11日昨日、新しいパソコンがやってきた。
私にとって、5台目のノートパソコンとなる。
初めてのバイオである。
ボディの"VAIO"の大きなロゴが自己主張の強さを示している感じで、いい。
ついこの前まで使っていたFMVは、考えた結果、お嫁に出すことに決めた。
昨日、バイオの箱を開ける前に、FMVのリカバリを実行した。
リカバリ作業はあっけないほど簡単に終わり、この前まで不機嫌極まりなかったFMVは、ものの30分ほどで生まれたばかりの兎のように従順で、無垢なマシンに変身してしまった。
ウエットワイパーで丹念に清拭する。
お嫁に行くのだから、精一杯きれいにしてあげなくちゃ。
買ってからまだ1年4ヶ月だが、なぜか初めから手のかかる子だった。
私とは相性が悪かったのかもしれない。
嫁いだ先で、きっと新しい人生が待っていることだろう。
やはり、私はマシンに感情移入しすぎる。
手がかかって仕方なかったFMVが、今は妙にいとしい。
私にとって、5台目のノートパソコンとなる。
初めてのバイオである。
ボディの"VAIO"の大きなロゴが自己主張の強さを示している感じで、いい。
ついこの前まで使っていたFMVは、考えた結果、お嫁に出すことに決めた。
昨日、バイオの箱を開ける前に、FMVのリカバリを実行した。
リカバリ作業はあっけないほど簡単に終わり、この前まで不機嫌極まりなかったFMVは、ものの30分ほどで生まれたばかりの兎のように従順で、無垢なマシンに変身してしまった。
ウエットワイパーで丹念に清拭する。
お嫁に行くのだから、精一杯きれいにしてあげなくちゃ。
買ってからまだ1年4ヶ月だが、なぜか初めから手のかかる子だった。
私とは相性が悪かったのかもしれない。
嫁いだ先で、きっと新しい人生が待っていることだろう。
やはり、私はマシンに感情移入しすぎる。
手がかかって仕方なかったFMVが、今は妙にいとしい。
こけし
2003年2月8日スーパーの窓ガラスに駅弁フェアのポスターが貼ってあった。
自転車のかごに買い物荷物を入れながらぼんやり見ていると、
妙な名前の弁当があるのに気づいた。
『ハローキティの電動こけし弁当』 !?
ギョッとしながらよく見ると、
『ハローキティの仙台こけし弁当』だった。
なーんだ・・・。
こけしの形をしたキティちゃんがふたになっている弁当箱の写真が載っている。
横にいた息子が言った。
「ママ、こけしって何?」
再び、ギョッ。
何と答えたものか素早く考えをめぐらせたが、
すぐに、単にこけしの説明をすればいいのだと気づいてホッとした。
自転車のかごに買い物荷物を入れながらぼんやり見ていると、
妙な名前の弁当があるのに気づいた。
『ハローキティの電動こけし弁当』 !?
ギョッとしながらよく見ると、
『ハローキティの仙台こけし弁当』だった。
なーんだ・・・。
こけしの形をしたキティちゃんがふたになっている弁当箱の写真が載っている。
横にいた息子が言った。
「ママ、こけしって何?」
再び、ギョッ。
何と答えたものか素早く考えをめぐらせたが、
すぐに、単にこけしの説明をすればいいのだと気づいてホッとした。
温泉に行きましょう
2003年2月7日「一緒に温泉に行きませんか」という内容のメールが、
ここ数日間に30通以上届いている。
何日か前に、ある友達づくり系サイトに登録した。
出会い系の一種とはいえ、しごく健全なサイトである。
その際に、自己紹介の欄に「海外旅行と温泉が好き」、と書いたのだ。
温泉へのお誘いのメールをくれるのは、もちろんすべて男性である。
顔も見たことがない相手に対して、二人で温泉に行こうと誘うことができる人の
神経はどうなっているのだろうか。
知らない女性に(正確には女性だと名乗っている人に)温泉に行こう、
とメールすることで、彼らの淋しさはどれだけ解消されるのだろう。
彼らから送られてくる”はじめましてメール”にはいろいろな希望が書かれている。
始めは友達から。仲良くなったら一緒に食事やお酒、テーマパークへ。
そして、やがては旅行に行きましょう。ぼくはクルマをもっています。
おおむね、こんな感じだ。
みんな、淋しいのだろうか。
淋しがり屋であるだけかもしれないが。
真に淋しいのと、単に淋しがり屋であるのとは少し違う。
淋しい人と淋しがり屋の人から温泉に誘われて、
かえって淋しくなってしまう私も、きっとそのいずれかだ。
ここ数日間に30通以上届いている。
何日か前に、ある友達づくり系サイトに登録した。
出会い系の一種とはいえ、しごく健全なサイトである。
その際に、自己紹介の欄に「海外旅行と温泉が好き」、と書いたのだ。
温泉へのお誘いのメールをくれるのは、もちろんすべて男性である。
顔も見たことがない相手に対して、二人で温泉に行こうと誘うことができる人の
神経はどうなっているのだろうか。
知らない女性に(正確には女性だと名乗っている人に)温泉に行こう、
とメールすることで、彼らの淋しさはどれだけ解消されるのだろう。
彼らから送られてくる”はじめましてメール”にはいろいろな希望が書かれている。
始めは友達から。仲良くなったら一緒に食事やお酒、テーマパークへ。
そして、やがては旅行に行きましょう。ぼくはクルマをもっています。
おおむね、こんな感じだ。
みんな、淋しいのだろうか。
淋しがり屋であるだけかもしれないが。
真に淋しいのと、単に淋しがり屋であるのとは少し違う。
淋しい人と淋しがり屋の人から温泉に誘われて、
かえって淋しくなってしまう私も、きっとそのいずれかだ。
ドライアイス
2003年2月5日昨日、「伊東家の食卓」でドライアイスを使った大発見をやっていた。
ドライアイスには素手で触らないように、という注意を促すテロップを見て、息子が言う。
「ドライアイスって、どうしてじかに触っちゃいけないの?」
やけどをしてしまうから、と私が答えると、息子は驚いて聞く。
「ドライアイスって、冷たいのにやけどしちゃうの?どうして?」
冷たすぎてもやけどをすることがある、と話してやると、息子は妙に納得した顔でこう言った。
「なるほど。低温やけど、ってヤツだな・・・」
・・・ちょっと違う。
ドライアイスには素手で触らないように、という注意を促すテロップを見て、息子が言う。
「ドライアイスって、どうしてじかに触っちゃいけないの?」
やけどをしてしまうから、と私が答えると、息子は驚いて聞く。
「ドライアイスって、冷たいのにやけどしちゃうの?どうして?」
冷たすぎてもやけどをすることがある、と話してやると、息子は妙に納得した顔でこう言った。
「なるほど。低温やけど、ってヤツだな・・・」
・・・ちょっと違う。
豆まき
2003年2月3日節分である。
今年も息子が鬼役を買って出た。
スーパーで買った豆のおまけで付いてきた面をかぶり、庭で踊りまわる息子めがけて、「鬼は外、福は内」と小さく叫ぶ。
鬼は、人の心に棲むという。
私の心の鬼を討つために、いったい何袋の豆が要るだろう。
歳の数の5分の1程度の豆を口に運びながら、ぼんやりと考える。
今年も息子が鬼役を買って出た。
スーパーで買った豆のおまけで付いてきた面をかぶり、庭で踊りまわる息子めがけて、「鬼は外、福は内」と小さく叫ぶ。
鬼は、人の心に棲むという。
私の心の鬼を討つために、いったい何袋の豆が要るだろう。
歳の数の5分の1程度の豆を口に運びながら、ぼんやりと考える。
収納
2003年2月2日職場の同僚に、片付け上手で定評のある女性がいる。
その奥義を聞いてみた。
「捨てることです。」
彼女は事も無げに言う。
たとえば、タオル。
家の中に置く枚数は何枚まで、と決めておき、それを上回る枚数のタオルをもらってしまったりしたら、増えた分だけ捨てるのだという。
しかも、もらったタオルの色や柄が気に入らなければ、新品のまま捨てることもあるとのこと。
そこまで聞いて私は、これは真似できない、と思った。
タオルを新しいまま捨てるなんて、私には絶対にできない。
もったいないとか何とか言う以前に、それはタオルに対する冒涜ではないか。
タオルの名誉のためにも、新品のまま捨てるなどということは決してしてはならないように思う。
使い古したタオルも同様で、新参のタオルを収納するために、きょうまで愛用していた何の罪もないタオルをただ捨てるだなんて、私にはできない。
なるほど。
収納は才能だというが、こういうことなのだ。
もったいないなどと思わずに、ばっさり捨てることができる才能。
思い出や思い入れを「物」に籠めず、使わなくなったものはきちんと捨てられる才能。
気に入っていたタオルはどんなにボロくなろうとも可哀想で雑巾として使うことができないような私には、その才能は完全に欠如している。
そうだったのか。
我が家が片付かない理由が、よくわかった。
私は、捨てられない。
タオルも、写真も、手紙も、思い出も、自らのオンナも。
その奥義を聞いてみた。
「捨てることです。」
彼女は事も無げに言う。
たとえば、タオル。
家の中に置く枚数は何枚まで、と決めておき、それを上回る枚数のタオルをもらってしまったりしたら、増えた分だけ捨てるのだという。
しかも、もらったタオルの色や柄が気に入らなければ、新品のまま捨てることもあるとのこと。
そこまで聞いて私は、これは真似できない、と思った。
タオルを新しいまま捨てるなんて、私には絶対にできない。
もったいないとか何とか言う以前に、それはタオルに対する冒涜ではないか。
タオルの名誉のためにも、新品のまま捨てるなどということは決してしてはならないように思う。
使い古したタオルも同様で、新参のタオルを収納するために、きょうまで愛用していた何の罪もないタオルをただ捨てるだなんて、私にはできない。
なるほど。
収納は才能だというが、こういうことなのだ。
もったいないなどと思わずに、ばっさり捨てることができる才能。
思い出や思い入れを「物」に籠めず、使わなくなったものはきちんと捨てられる才能。
気に入っていたタオルはどんなにボロくなろうとも可哀想で雑巾として使うことができないような私には、その才能は完全に欠如している。
そうだったのか。
我が家が片付かない理由が、よくわかった。
私は、捨てられない。
タオルも、写真も、手紙も、思い出も、自らのオンナも。
冷静と情熱のあいだ
2003年2月1日「冷静と情熱のあいだ」を読んだ。
この物語がブームになったのは、数年も前のことである。
私はまだ映画も見ていない。
この本は、江國香織と辻仁成の二人の作家が、ひとつの恋愛を主人公の男女それぞれの視点から描いたふたつの物語で構成されている。
もともとは、月刊カドカワに二人の作家が交互に1章ずつ掲載していくという方法で連載されたものを、連載完結後に1冊ずつの本にまとめたものだという。
私は、辻氏の書いたBluの方から先に読んだ。読んでしまった。
2冊とも読み終えてからの感想だが、これは江國著のRossoから読んだ人と、私のようにBluから読んだ人、あるいは連載時に交互に読んだ人とでは、それぞれ大きく印象の違ってしまう物語なのではないだろうか。
はからずもBluから読んだ私は、主人公の男性「順正」にかなり感情移入してしまった。
そして、順正が語る順正自身と、恋人のあおいが語る順正像に微細なズレがあることが、とても興味深い。
自分が知っている自分など、全体のほんの半分程度なのかもしれない。もしかしたら、それ以下かも。
そんなことを実感させる、ふたつでひとつの物語である。
久しぶりにヤラれた。
実際にはまだ見たことのないミラノの街の景色が、脳裏から離れない。
何度読み返しても、泣けてしまう場面がある。
ここ数日、おかしな夢ばかり見ている。
「月刊カドカワ」連載当時同様に1章ずつ交互に編集し直した同名の本をネットで探し出して、きょうオーダーした。
もう1度、読まなければならない。
そして、順正とあおいの恋を自分なりにきちんと検証しなければ。
物事に感情移入しすぎるのが、昔からの、私のもっとも愛すべき欠点である。
この物語がブームになったのは、数年も前のことである。
私はまだ映画も見ていない。
この本は、江國香織と辻仁成の二人の作家が、ひとつの恋愛を主人公の男女それぞれの視点から描いたふたつの物語で構成されている。
もともとは、月刊カドカワに二人の作家が交互に1章ずつ掲載していくという方法で連載されたものを、連載完結後に1冊ずつの本にまとめたものだという。
私は、辻氏の書いたBluの方から先に読んだ。読んでしまった。
2冊とも読み終えてからの感想だが、これは江國著のRossoから読んだ人と、私のようにBluから読んだ人、あるいは連載時に交互に読んだ人とでは、それぞれ大きく印象の違ってしまう物語なのではないだろうか。
はからずもBluから読んだ私は、主人公の男性「順正」にかなり感情移入してしまった。
そして、順正が語る順正自身と、恋人のあおいが語る順正像に微細なズレがあることが、とても興味深い。
自分が知っている自分など、全体のほんの半分程度なのかもしれない。もしかしたら、それ以下かも。
そんなことを実感させる、ふたつでひとつの物語である。
久しぶりにヤラれた。
実際にはまだ見たことのないミラノの街の景色が、脳裏から離れない。
何度読み返しても、泣けてしまう場面がある。
ここ数日、おかしな夢ばかり見ている。
「月刊カドカワ」連載当時同様に1章ずつ交互に編集し直した同名の本をネットで探し出して、きょうオーダーした。
もう1度、読まなければならない。
そして、順正とあおいの恋を自分なりにきちんと検証しなければ。
物事に感情移入しすぎるのが、昔からの、私のもっとも愛すべき欠点である。
スキー
2003年1月26日午後、新幹線で東京に帰ってきた。
昨年に続き、息子を連れての2回目のスキーだった。
そのスキー場には、独身の頃に4,5人の友達グループで何回か行ったことがある。
友人の勤めていた会社の保養所が近くにあり、安く泊まれた。
ゲストハウスの外観は、当時と変わらないままだった。
吹雪がイヤ、晴れれば焼けるからイヤだと言っては滑るのをやめ、年中ここでお茶したものだ。
グループの男性たちが滑りに行っている間、私たちはよくここでお茶をしながら、オトコの話に花を咲かせた。
その友人には、長い間カレシがいなかった。
綺麗なのに、どうしてかな・・。私はいつも不思議に思っていた。
スキー宿に安く泊めてもらっている恩義を感じたせいでもないが、私は彼女に恋をしてもらいたくてならなかったのだ。
当時一緒にスキーに出かけていたグループの中に、ちょっといい男がいた。
温厚で知的でユーモアのセンスもあり、ルックスも悪くない。
立場が許すのであれば私がイタダキタイ、と思うほどの男性であった。
彼は、どう?
何度となく、私は彼を、彼女に勧めてみた。
すると彼女はいつもまんざらでもない顔で微笑むのだが、最後は決まってこう言った。
こっちがいいと思っても、相手の気持ちがあるものだから・・。
その二人が付き合ったからといって私に何かメリットがあるわけでもないのに、彼女がその台詞を言うたびに私はがっかりし、もどかしく思ったものだ。
その数年後、彼は亡くなった。
悲しい連絡をくれたのは、その友達だった。
33歳での急死だった。
どうして彼女が彼の死を知ったのか、くわしいことは聞かなかった。
当時、長男を妊娠中で体調が思わしくなかった私は葬儀に参列することができず、彼女にお香典を託した。
結局、彼は独身のまま逝ってしまった。
そしてその友達は一昨年結婚し、今は一児の母である。
昔と変わらぬゲレンデとゲストハウスを眺めながら、懐かしい友人たちの顔と無邪気に遊んでいた独身時代を思い出す二日間だった。
昨年に続き、息子を連れての2回目のスキーだった。
そのスキー場には、独身の頃に4,5人の友達グループで何回か行ったことがある。
友人の勤めていた会社の保養所が近くにあり、安く泊まれた。
ゲストハウスの外観は、当時と変わらないままだった。
吹雪がイヤ、晴れれば焼けるからイヤだと言っては滑るのをやめ、年中ここでお茶したものだ。
グループの男性たちが滑りに行っている間、私たちはよくここでお茶をしながら、オトコの話に花を咲かせた。
その友人には、長い間カレシがいなかった。
綺麗なのに、どうしてかな・・。私はいつも不思議に思っていた。
スキー宿に安く泊めてもらっている恩義を感じたせいでもないが、私は彼女に恋をしてもらいたくてならなかったのだ。
当時一緒にスキーに出かけていたグループの中に、ちょっといい男がいた。
温厚で知的でユーモアのセンスもあり、ルックスも悪くない。
立場が許すのであれば私がイタダキタイ、と思うほどの男性であった。
彼は、どう?
何度となく、私は彼を、彼女に勧めてみた。
すると彼女はいつもまんざらでもない顔で微笑むのだが、最後は決まってこう言った。
こっちがいいと思っても、相手の気持ちがあるものだから・・。
その二人が付き合ったからといって私に何かメリットがあるわけでもないのに、彼女がその台詞を言うたびに私はがっかりし、もどかしく思ったものだ。
その数年後、彼は亡くなった。
悲しい連絡をくれたのは、その友達だった。
33歳での急死だった。
どうして彼女が彼の死を知ったのか、くわしいことは聞かなかった。
当時、長男を妊娠中で体調が思わしくなかった私は葬儀に参列することができず、彼女にお香典を託した。
結局、彼は独身のまま逝ってしまった。
そしてその友達は一昨年結婚し、今は一児の母である。
昔と変わらぬゲレンデとゲストハウスを眺めながら、懐かしい友人たちの顔と無邪気に遊んでいた独身時代を思い出す二日間だった。
クローン
2003年1月21日新聞で、日本初のクローンの赤ちゃんが誕生するという記事を読んだ。
生まれるのは、18ヶ月前に亡くなった2歳の男の子のクローンだという。
亡くなった男の子の両親が、日本円にして約2400万円を出して例の教団と契約をした、と記事にはあった。
この記事を読み、私は思わず涙ぐんでしまった。
亡くなった息子にもう一度逢いたいという両親の切なる願いが、痛いほど伝わってくる。
鈴木光司の「らせん」も、似たようなシチュエーションのストーリー展開だった。
あれを読んだ時は、御伽噺としか思えなかったことが、現実に起ころうとしている。
生命は、何処に向かっているのだろうか。
倫理的な問題は、ともかく・・
私は、そのご両親が、亡くした息子さんとそっくりの男の子にもう一度逢えることを祈らずにはいられない。
単なる母親の一人として。
生まれるのは、18ヶ月前に亡くなった2歳の男の子のクローンだという。
亡くなった男の子の両親が、日本円にして約2400万円を出して例の教団と契約をした、と記事にはあった。
この記事を読み、私は思わず涙ぐんでしまった。
亡くなった息子にもう一度逢いたいという両親の切なる願いが、痛いほど伝わってくる。
鈴木光司の「らせん」も、似たようなシチュエーションのストーリー展開だった。
あれを読んだ時は、御伽噺としか思えなかったことが、現実に起ころうとしている。
生命は、何処に向かっているのだろうか。
倫理的な問題は、ともかく・・
私は、そのご両親が、亡くした息子さんとそっくりの男の子にもう一度逢えることを祈らずにはいられない。
単なる母親の一人として。
ロッジ
2003年1月20日昨年の冬、初めて息子をスキーに連れて行った。
宿泊したのは、ロッジと名のつく、いわゆるスキー宿だった。
息子は7歳のその年まで、旅行といえば親の嗜好に従い大型ホテルにしか泊まったことがなかった。
いわゆる純和風旅館やペンション、民宿、ロッジというような所を彼は知らなかったのである。
出かける前に予備知識をと思い、ある日私は息子に言った。
「今度スキーでお泊りする所にはね、エレベーターがないんだよ」
すると息子は、きょとんとした顔で、
「じゃ、エスカレーターだけなの?」と訊く。
エレベーターのない宿泊施設にエスカレーターなんかあるかいっ! とツッコミたい気持ちを堪えて、エスカレーターもないの、と私は続けた。
しかし、「じゃ、階段だけなの? 」と言う息子の遠い視線の先には、20階建てのホテルの階段を自分の部屋に向かってひたすら昇る息子の姿が浮かんでいる。
私はあわてて、今度お泊りする所は2階建てなの、と説明した。
すると今度は、「2階建てなの? じゃ、横にうーんと広いんだね」とくる。
どうも、かみ合わない。
まぁ、行ってみればわかるだろう。
百聞は一見にしかず、である。
息子は、スキー宿での2泊を大いに楽しんだ。
宿泊客全員が日に何度も上り下りする階段。
壁に貼られた手書きのお知らせ。
宿の人を呼んで買う、自動じゃない自動販売機。
100円玉を入れないと映らないテレビ。
すべてが彼にとっては新鮮であったに違いない。
用もないのに階段の上に何十分も座り込んで通り過ぎる客たちの顔を眺めたり、何度も玄関を出て雪に触ってみたりした彼は、2泊して東京に帰る頃にはすっかり「ロッジ」のファンになっていた。
今年も息子を連れてスキーに出かける。
今回もまた、宿泊はスキー宿である。
「今度のお宿もエレベーターがないよ」
先日、息子に言ってみた。
すると、すでにロッジの権威である彼はにっこり笑ってこう言った。
「ママ、当たり前でしょう。スキーでお泊りする所にエレベーターなんかないよ。ロッジなんだから」
アルファリゾート・トマムや、リステル猪苗代のような大規模ホテルに泊まって滑るスキーもあるということに彼が気づくのは、何年先のことだろうか。
結局、自分の経験の中でしか物事を考えることができない子どもが、改めて可笑しく、可愛い。
宿泊したのは、ロッジと名のつく、いわゆるスキー宿だった。
息子は7歳のその年まで、旅行といえば親の嗜好に従い大型ホテルにしか泊まったことがなかった。
いわゆる純和風旅館やペンション、民宿、ロッジというような所を彼は知らなかったのである。
出かける前に予備知識をと思い、ある日私は息子に言った。
「今度スキーでお泊りする所にはね、エレベーターがないんだよ」
すると息子は、きょとんとした顔で、
「じゃ、エスカレーターだけなの?」と訊く。
エレベーターのない宿泊施設にエスカレーターなんかあるかいっ! とツッコミたい気持ちを堪えて、エスカレーターもないの、と私は続けた。
しかし、「じゃ、階段だけなの? 」と言う息子の遠い視線の先には、20階建てのホテルの階段を自分の部屋に向かってひたすら昇る息子の姿が浮かんでいる。
私はあわてて、今度お泊りする所は2階建てなの、と説明した。
すると今度は、「2階建てなの? じゃ、横にうーんと広いんだね」とくる。
どうも、かみ合わない。
まぁ、行ってみればわかるだろう。
百聞は一見にしかず、である。
息子は、スキー宿での2泊を大いに楽しんだ。
宿泊客全員が日に何度も上り下りする階段。
壁に貼られた手書きのお知らせ。
宿の人を呼んで買う、自動じゃない自動販売機。
100円玉を入れないと映らないテレビ。
すべてが彼にとっては新鮮であったに違いない。
用もないのに階段の上に何十分も座り込んで通り過ぎる客たちの顔を眺めたり、何度も玄関を出て雪に触ってみたりした彼は、2泊して東京に帰る頃にはすっかり「ロッジ」のファンになっていた。
今年も息子を連れてスキーに出かける。
今回もまた、宿泊はスキー宿である。
「今度のお宿もエレベーターがないよ」
先日、息子に言ってみた。
すると、すでにロッジの権威である彼はにっこり笑ってこう言った。
「ママ、当たり前でしょう。スキーでお泊りする所にエレベーターなんかないよ。ロッジなんだから」
アルファリゾート・トマムや、リステル猪苗代のような大規模ホテルに泊まって滑るスキーもあるということに彼が気づくのは、何年先のことだろうか。
結局、自分の経験の中でしか物事を考えることができない子どもが、改めて可笑しく、可愛い。
同級生の死
2003年1月18日中学時代の同級生から電話がきた。
彼女とゆっくり話すのは、おそらく卒業以来だろう。
用件を話し終えると、自然と話題は同級生たちの近況に及んだ。
会話の中で、同級生の男子が一人亡くなっていることを知った。
同じクラスになったことはなかったが、ユーモアがありスポーツが得意だった彼は、学年の人気者だった。
亡くなったのは、2、3年前のことらしい。
死因を聞いて、二度驚いた。
餅をのどに詰まらせての窒息死だという。
30代の若さで、そんなことがあるのだろうか。
しかも、あんなに体格のいい男の子が。
人は、わからない。
亡くなっている同級生は、他にもいた。
窒息死した彼を含めて、4人の同級生がすでに故人となっている。
全クラス合わせても200名ちょっとの学年の中で、40歳を迎えることなく亡くなっている人が4人もいるのだ。
もしかしたら、他にもいるのかもしれない。私と彼女が、同級生たちすべての消息を把握しているわけではない。
この先、こうして誰かと話をするたびに、このような会話が繰り返されていくのかと思うと、背筋が寒くなる。
そしていつかは、私の名前もこの話題の中にあがる日がくるのだろう。
生ある者は、誰でも皆、死に向かって生きている。
一日一日、間違いなく死に近づいているのである。
それは、わかっているのだけれど・・。
彼女とゆっくり話すのは、おそらく卒業以来だろう。
用件を話し終えると、自然と話題は同級生たちの近況に及んだ。
会話の中で、同級生の男子が一人亡くなっていることを知った。
同じクラスになったことはなかったが、ユーモアがありスポーツが得意だった彼は、学年の人気者だった。
亡くなったのは、2、3年前のことらしい。
死因を聞いて、二度驚いた。
餅をのどに詰まらせての窒息死だという。
30代の若さで、そんなことがあるのだろうか。
しかも、あんなに体格のいい男の子が。
人は、わからない。
亡くなっている同級生は、他にもいた。
窒息死した彼を含めて、4人の同級生がすでに故人となっている。
全クラス合わせても200名ちょっとの学年の中で、40歳を迎えることなく亡くなっている人が4人もいるのだ。
もしかしたら、他にもいるのかもしれない。私と彼女が、同級生たちすべての消息を把握しているわけではない。
この先、こうして誰かと話をするたびに、このような会話が繰り返されていくのかと思うと、背筋が寒くなる。
そしていつかは、私の名前もこの話題の中にあがる日がくるのだろう。
生ある者は、誰でも皆、死に向かって生きている。
一日一日、間違いなく死に近づいているのである。
それは、わかっているのだけれど・・。
産婦人科
2003年1月17日近所の産婦人科医院の受付で、会計を済ませた若い女の子がナースから説明を受けていた。
帰ったら、すぐに横になってくださいね。
きょうは、水分をいっぱい摂って。
美味しいものをたくさん食べて、早く体力が戻るように・・・
手術を受けたのだろう。
20歳そこそこくらいに見える彼女は、説明を聞き終わると、だるそうに受付を後にした。
母の薬をもらい会計を済ませて私が玄関に戻ると、彼女はまだ座り込んだままのろのろと靴を履いていた。
医院の前の道路で信号待ちをしながら、私は彼女の後姿を見送った。
タクシーに乗ればいいのに・・・。
通り過ぎて行く空車のタクシーを、無関係の私が未練がましく見てしまう。
けれども彼女は、ゆっくりとした足取りで、駅に続く道を歩いて行き、やがて見えなくなった。
帰ったら、すぐに横になってくださいね。
きょうは、水分をいっぱい摂って。
美味しいものをたくさん食べて、早く体力が戻るように・・・
手術を受けたのだろう。
20歳そこそこくらいに見える彼女は、説明を聞き終わると、だるそうに受付を後にした。
母の薬をもらい会計を済ませて私が玄関に戻ると、彼女はまだ座り込んだままのろのろと靴を履いていた。
医院の前の道路で信号待ちをしながら、私は彼女の後姿を見送った。
タクシーに乗ればいいのに・・・。
通り過ぎて行く空車のタクシーを、無関係の私が未練がましく見てしまう。
けれども彼女は、ゆっくりとした足取りで、駅に続く道を歩いて行き、やがて見えなくなった。
夢
2003年1月15日明け方、夢を見た。
夢の中で私は、親しい友人と食事の約束をした。
時間になり、私は待ち合わせの約束をした店の前まで来て、友人の携帯に電話をかけようとした。
しかし、いくら携帯のメモリーを調べても、その友人の電話番号が出てこない。
おかしい。登録していないはずはないのに。
そこで、やっと気づいた。
彼は8年前に死んだのだ。
携帯の番号など、わかるわけがない・・・。
私は落胆し、そして目覚めた。
機械ものには目がなかった彼のこと、今この時代に生きていれば、最新のデジカメやパソコン、携帯電話に、さぞや夢中になっていたことだろう。
しかし、どんな新進気鋭の携帯電話をもってしても、あの世の人と通話をすることは、できない。
永遠に。
夢の中で私は、親しい友人と食事の約束をした。
時間になり、私は待ち合わせの約束をした店の前まで来て、友人の携帯に電話をかけようとした。
しかし、いくら携帯のメモリーを調べても、その友人の電話番号が出てこない。
おかしい。登録していないはずはないのに。
そこで、やっと気づいた。
彼は8年前に死んだのだ。
携帯の番号など、わかるわけがない・・・。
私は落胆し、そして目覚めた。
機械ものには目がなかった彼のこと、今この時代に生きていれば、最新のデジカメやパソコン、携帯電話に、さぞや夢中になっていたことだろう。
しかし、どんな新進気鋭の携帯電話をもってしても、あの世の人と通話をすることは、できない。
永遠に。
水族園
2003年1月13日昨日、息子と二人で葛西臨海公園へ行った。
水族園は相変わらず混み合っていて、水槽に近づくことさえままならない状態であった。
これまで津々浦々の水族館系テーマパークを訪れてきたが、混雑のためにこれほど水槽が見にくい水族館も珍しい。
葛西を訪れたのは通算8回目だが、来るたびに同じことを感じて帰る。
たとえば昨年行った大阪の海遊館も、池袋のサンシャイン水族館なども、とても混んではいたが、魚が見えないというストレスをこれほどまでに感じることはなかった。
他の水族館と、何が違うのか?
20分も並んで入った館内レストランで、野菜カレーを食べながら考えた。
順路の設定の仕方、水槽の高さと大きさ、フロア面積、係員の誘導の有無・・・。
思いつく限り他の水族館との違いを考えているうち、決定的な差に気づいた。
入園料の安さである。
大人700円。
小学生は無料。
ここは、役所なのだ。
それじゃ文句は言えないか・・・。
何の解決にもならない結論に、我ながら呆れた。
水族園は相変わらず混み合っていて、水槽に近づくことさえままならない状態であった。
これまで津々浦々の水族館系テーマパークを訪れてきたが、混雑のためにこれほど水槽が見にくい水族館も珍しい。
葛西を訪れたのは通算8回目だが、来るたびに同じことを感じて帰る。
たとえば昨年行った大阪の海遊館も、池袋のサンシャイン水族館なども、とても混んではいたが、魚が見えないというストレスをこれほどまでに感じることはなかった。
他の水族館と、何が違うのか?
20分も並んで入った館内レストランで、野菜カレーを食べながら考えた。
順路の設定の仕方、水槽の高さと大きさ、フロア面積、係員の誘導の有無・・・。
思いつく限り他の水族館との違いを考えているうち、決定的な差に気づいた。
入園料の安さである。
大人700円。
小学生は無料。
ここは、役所なのだ。
それじゃ文句は言えないか・・・。
何の解決にもならない結論に、我ながら呆れた。
エアコン
2003年1月12日きょう、電気屋がエアコンの修理に来た。
パソコンのクラッシュより、もっと深刻なクラッシュが我が家には存在していたのだ。
昨年の夏に買い換えたばかりのエアコンが、まったく効かないのである。
設定温度を最高にして1日中つけっぱなしにしていても、ちっとも暖まらない。
先月からずっと、おかしいおかしいと思いつつも、仕事の忙しさや年末に旅行があったため、業者に連絡をとれぬまま日が過ぎていった。
リビングの暖房機器は、このエアコンとホットカーペットだけである。
私は、家に居ながらにして足の指が凍傷になってしまった。
点検の結果、エアコンのガスが漏れていたのが不調の原因であった。
そして先刻、無事に修理は完了し、現在の室温は15度を超えている。
この冬初めての暖かさである。
やれば、できるんじゃない・・。
元気に作動しているエアコンを見上げ、私はつぶやいた。
パソコンにエアコン。
どうも、コンとつく電化製品が不調らしい、と思ったところで、ふと思い出したことがある。
リビングのテレビのリモコンも故障しているのだ。
4チャンネルだけが、どうしても反応しない。
まったく、どいつもこいつも・・・・。
パソコンのクラッシュより、もっと深刻なクラッシュが我が家には存在していたのだ。
昨年の夏に買い換えたばかりのエアコンが、まったく効かないのである。
設定温度を最高にして1日中つけっぱなしにしていても、ちっとも暖まらない。
先月からずっと、おかしいおかしいと思いつつも、仕事の忙しさや年末に旅行があったため、業者に連絡をとれぬまま日が過ぎていった。
リビングの暖房機器は、このエアコンとホットカーペットだけである。
私は、家に居ながらにして足の指が凍傷になってしまった。
点検の結果、エアコンのガスが漏れていたのが不調の原因であった。
そして先刻、無事に修理は完了し、現在の室温は15度を超えている。
この冬初めての暖かさである。
やれば、できるんじゃない・・。
元気に作動しているエアコンを見上げ、私はつぶやいた。
パソコンにエアコン。
どうも、コンとつく電化製品が不調らしい、と思ったところで、ふと思い出したことがある。
リビングのテレビのリモコンも故障しているのだ。
4チャンネルだけが、どうしても反応しない。
まったく、どいつもこいつも・・・・。
パソコン
2003年1月10日一昨日、メインのPCがクラッシュした。
かねてから、あぶないあぶないと思っていたが、とうとうやってしまった。
予兆はあったので、マメにバックアップは取っておいた。
だから、今回はあまり慌てていない。
とは言うものの、やるべき作業は山ほどある。
出るのは、ため息ばかりだ。
可愛いけれど手がかかる、PC。
ペットが1匹病気になったような感覚をおぼえる。
しかし、PCなしでは、もう1日も暮らせない。
そして今夜も、復旧のための作業は続く・・。
かねてから、あぶないあぶないと思っていたが、とうとうやってしまった。
予兆はあったので、マメにバックアップは取っておいた。
だから、今回はあまり慌てていない。
とは言うものの、やるべき作業は山ほどある。
出るのは、ため息ばかりだ。
可愛いけれど手がかかる、PC。
ペットが1匹病気になったような感覚をおぼえる。
しかし、PCなしでは、もう1日も暮らせない。
そして今夜も、復旧のための作業は続く・・。
残り湯
2003年1月4日先日、職場の同僚たちと雑談をしている時に、お風呂の残り湯をどう使っているかという話題が出た。
殆どの人が、洗濯に使っている、と言う中で、私は問われるまま正直に「そのまま流して捨てる」と答えた。
もったいないのに何故?と同僚たちに訊かれたが、本当の理由を言えば座の混乱を招くと思い、当たり障りのないことを言って、その場は逃れた。
「風呂の残り湯なんか、汚いから。」
これが、真の理由である。
自分と息子が入っただけの風呂の残り湯ならばいざ知らず、夫が入ったあとの残り湯を洗濯に使う気には、どうしてもなれない。
靴下とか座布団カバー、シーツなどを洗うだけならばいいかもしれない。
しかし、タオル、下着などを含む日常の洗濯物を、家族全員がかわるがわる入った風呂の残り湯で洗うことは、私にはできないのである。
たとえば、かの同僚たちも、公衆浴場の残り湯で自分の下着を洗濯する気にはなれないだろう。
それと殆ど変らぬ感覚を、自宅の風呂の残り湯に私は感じている、ということだ。
家族とはいえ、結局のところ、夫は他人にすぎない。
こういう感覚は、結婚するまで知らなかった。
プチ潔癖症。
私は、自分をそう呼んでいる。
そう認めることで、自分の面倒な性格を笑うことができるようになった。
自分がこんなに潔癖だったというのも、結婚して初めて気づいたことである。
もしかしたら、私を潔癖症にしたのは「結婚」なのかもしれない。
殆どの人が、洗濯に使っている、と言う中で、私は問われるまま正直に「そのまま流して捨てる」と答えた。
もったいないのに何故?と同僚たちに訊かれたが、本当の理由を言えば座の混乱を招くと思い、当たり障りのないことを言って、その場は逃れた。
「風呂の残り湯なんか、汚いから。」
これが、真の理由である。
自分と息子が入っただけの風呂の残り湯ならばいざ知らず、夫が入ったあとの残り湯を洗濯に使う気には、どうしてもなれない。
靴下とか座布団カバー、シーツなどを洗うだけならばいいかもしれない。
しかし、タオル、下着などを含む日常の洗濯物を、家族全員がかわるがわる入った風呂の残り湯で洗うことは、私にはできないのである。
たとえば、かの同僚たちも、公衆浴場の残り湯で自分の下着を洗濯する気にはなれないだろう。
それと殆ど変らぬ感覚を、自宅の風呂の残り湯に私は感じている、ということだ。
家族とはいえ、結局のところ、夫は他人にすぎない。
こういう感覚は、結婚するまで知らなかった。
プチ潔癖症。
私は、自分をそう呼んでいる。
そう認めることで、自分の面倒な性格を笑うことができるようになった。
自分がこんなに潔癖だったというのも、結婚して初めて気づいたことである。
もしかしたら、私を潔癖症にしたのは「結婚」なのかもしれない。
夫
2003年1月3日午前中にスーパーに買い物に出かけた夫が、すぐに戻ってきた。
財布を忘れたのだという。
まさに、男サザエさんだ。
彼は、天気予報ファンである。
敬虔な信者といってもいい。
首都圏に雪、などという予報が出てしまうと、やおら興奮し、揉み手しながら対策を練り始める。
明日は自転車に乗れるか、電車は動くのか、といったことを呟きながら家の中をうろうろ歩き回り、落ち着かないことこの上ない。
予報が当たらなかった時の言い草もいい。
「予定が遅れているんだ」とくる。
予報ではなく、予定。気象が、まるで待ち合わせしている知人のようだ。
旅行の予定などがあると、1ヶ月近くも前からテレビで長期予報を見て一喜一憂する。
旅行計画を天気予報で楽しむ人も珍しいだろう。
天気予報なんか、当たらない。
時に、私がそう言って煽ると、夫は口角泡を飛ばしながら、天気予報の信憑性の高さを主張する。
だって、最近は局によって予報が違うのよ。
私がそう言うと、夫は不機嫌になる。
なぜテレビ局は気象庁の発表を素直に信じないのか、と文句を言うのだ。
気象庁の発表を、大本営発表のように考えているらしい。
そもそも、天気予報の仕組みそのものがよく理解できていないと見受けられる。
要するに、単なるミーハーファンなのかもしれない。
夫は、実に面白い男である。
この「面白い」には、奇妙な、不思議な、風変わりな、といったニュアンスを含む。
人間ウォッチングをライフワークのひとつとしている私にとっては、興味深い観察対象であることに違いはない。
そう考えると、この結婚は、ある意味私にとって成功だったのかもしれない。
結婚生活など、もともと面白味に欠けるものなのだから、些細なことに愉しみを見出さなければやってられないではないか。
きょうの夫は、先刻から首都圏に降り始めた雪が「積もらない」であろうことを天気予報で見て、興奮をそがれた顔でぼんやりしている。
財布を忘れたのだという。
まさに、男サザエさんだ。
彼は、天気予報ファンである。
敬虔な信者といってもいい。
首都圏に雪、などという予報が出てしまうと、やおら興奮し、揉み手しながら対策を練り始める。
明日は自転車に乗れるか、電車は動くのか、といったことを呟きながら家の中をうろうろ歩き回り、落ち着かないことこの上ない。
予報が当たらなかった時の言い草もいい。
「予定が遅れているんだ」とくる。
予報ではなく、予定。気象が、まるで待ち合わせしている知人のようだ。
旅行の予定などがあると、1ヶ月近くも前からテレビで長期予報を見て一喜一憂する。
旅行計画を天気予報で楽しむ人も珍しいだろう。
天気予報なんか、当たらない。
時に、私がそう言って煽ると、夫は口角泡を飛ばしながら、天気予報の信憑性の高さを主張する。
だって、最近は局によって予報が違うのよ。
私がそう言うと、夫は不機嫌になる。
なぜテレビ局は気象庁の発表を素直に信じないのか、と文句を言うのだ。
気象庁の発表を、大本営発表のように考えているらしい。
そもそも、天気予報の仕組みそのものがよく理解できていないと見受けられる。
要するに、単なるミーハーファンなのかもしれない。
夫は、実に面白い男である。
この「面白い」には、奇妙な、不思議な、風変わりな、といったニュアンスを含む。
人間ウォッチングをライフワークのひとつとしている私にとっては、興味深い観察対象であることに違いはない。
そう考えると、この結婚は、ある意味私にとって成功だったのかもしれない。
結婚生活など、もともと面白味に欠けるものなのだから、些細なことに愉しみを見出さなければやってられないではないか。
きょうの夫は、先刻から首都圏に降り始めた雪が「積もらない」であろうことを天気予報で見て、興奮をそがれた顔でぼんやりしている。
旅行
2003年1月1日昨日、3泊4日の大阪旅行から帰ってきた。
大阪ミナミのホテルを拠点に、神戸やUSJを観光した。
旅行は、いい。
食事の支度も後片付けもしなくてもいいし、洗濯もしなくていい。
私のようにフルタイムの仕事をもつ主婦にとっては、これは最高の蜜の味である。
しかし、そのツケがきょう届いた。
ホテルから送った、洗濯物満載のスーツケースとダンボール箱が合わせて3個到着したのだ。
そして、元日の朝から、私は洗濯物の山と戦うこととなった。
世間の人は、大晦日の昨日まで大掃除をしたり正月準備に追われて忙しく過ごしていたことだろう。
大掃除もせずに昨日まで旅行に出ていた私は、元日のきょう、こうして忙しく立ち働く。
大阪ミナミのホテルを拠点に、神戸やUSJを観光した。
旅行は、いい。
食事の支度も後片付けもしなくてもいいし、洗濯もしなくていい。
私のようにフルタイムの仕事をもつ主婦にとっては、これは最高の蜜の味である。
しかし、そのツケがきょう届いた。
ホテルから送った、洗濯物満載のスーツケースとダンボール箱が合わせて3個到着したのだ。
そして、元日の朝から、私は洗濯物の山と戦うこととなった。
世間の人は、大晦日の昨日まで大掃除をしたり正月準備に追われて忙しく過ごしていたことだろう。
大掃除もせずに昨日まで旅行に出ていた私は、元日のきょう、こうして忙しく立ち働く。
京都にて
2002年12月30日28日から旅行で関西にきている。
京都に二泊し、きょう大阪に移動した。
京都ではMホテルに泊まった。
京都では屈指の有名ホテルであるはずだ。
そのMホテルで、ひとつだけ困ったことがあった。
部屋の水道の水が、妙に熱いのだ。
洗面所の水道はシングルレバーになっており、レバーを左右に動かすことで自由に温度を変えることができるようになっている。
ところが。
レバーが中央の状態で水を出すと、コーヒーが飲めちゃうんじゃないかと思うくらいの熱々の水が出てくるのだ。
とてもじゃないが、熱くて手なんか洗えない。
そして、温度が下がるはずの右側にレバーを回すと、確かに水は水らしい温度になるのだが、今度は水圧が極端に下がってしまい、チョロチョロとしか出なくなる。
念のため左側に回してみると、今度は本当にコーヒーが飲める温度のお湯が迸り出る。
要するに、水が出ないのだ。
生活の中で水が必要な場面がいかに多いか、京都二泊の間に痛感した。
いちばん困ったのは、顔を洗う時だった。
熱い湯で洗顔することはできないので、チョロチョロの水を両手に溜めながら、時間をかけて洗うしかない。
なんだか、情けない・・・。
ついでに言えば、廊下の暖房が効きすぎていて異常に暑い。
部屋を一歩出ると、ここはタイか?と思うほどの熱気。
これはサービスなのだろうか?
熱きサービス・Mホテル。
京都に二泊し、きょう大阪に移動した。
京都ではMホテルに泊まった。
京都では屈指の有名ホテルであるはずだ。
そのMホテルで、ひとつだけ困ったことがあった。
部屋の水道の水が、妙に熱いのだ。
洗面所の水道はシングルレバーになっており、レバーを左右に動かすことで自由に温度を変えることができるようになっている。
ところが。
レバーが中央の状態で水を出すと、コーヒーが飲めちゃうんじゃないかと思うくらいの熱々の水が出てくるのだ。
とてもじゃないが、熱くて手なんか洗えない。
そして、温度が下がるはずの右側にレバーを回すと、確かに水は水らしい温度になるのだが、今度は水圧が極端に下がってしまい、チョロチョロとしか出なくなる。
念のため左側に回してみると、今度は本当にコーヒーが飲める温度のお湯が迸り出る。
要するに、水が出ないのだ。
生活の中で水が必要な場面がいかに多いか、京都二泊の間に痛感した。
いちばん困ったのは、顔を洗う時だった。
熱い湯で洗顔することはできないので、チョロチョロの水を両手に溜めながら、時間をかけて洗うしかない。
なんだか、情けない・・・。
ついでに言えば、廊下の暖房が効きすぎていて異常に暑い。
部屋を一歩出ると、ここはタイか?と思うほどの熱気。
これはサービスなのだろうか?
熱きサービス・Mホテル。